どでかいルアーをキャストする
激しい水柱を上げてルアーを咥え込み魚体が反転する
一瞬の隙も許さない猛烈なファイト
皆さんがかつて親しんだブラックバス釣りをそのまま超弩級に進化させたような釣り。
体長180㎝、重さ80キロ以上の大型に成長するロウニンアジは英名Giant【巨大な】Trevally【アジ】と名付けられており、頭文字を取ってGTと呼ばれています。
アジ科では最も大きく成長する魚種で体高は高く、大きな顎をもち、真鯛に似た顔つきをしています。性質は非常に獰猛で、捕食のスイッチが入ると猛スピードで海面近くまで浮上して、小魚などの群れに襲い掛かります。
水面を飛んでいる海鳥を丸呑みにする映像が放映され話題になりました。
他の魚種と同様に、大きく育つことができる個体は非常に少数で、数多くの修羅場を潜り抜けたものが数十キロを超えるGTとなることができ、50kg以上の大物になるまでには15~20年かかるとも言われています。長い年月をひとり生き抜いてきたロウニンアジはまさに「浪人」。
分布域はアフリカ東岸・南日本・ハワイ諸島・マルキーズ諸島・オーストラリア北部と広く、温暖な地域に生息しています。ハワイではGTのことをウルアと呼び、ウルアポールと呼ばれる太く強い竿を使用してのイカや魚を餌にした釣りが行われていました。
1980年代ころより一部のマニアが中心となってルアーでの釣りがはじまり、釣り具の進化とともに各地に浸透していきました。
日本では南西諸島をより南から北へ広がっていったそうです。現在ではトカラ列島や奄美大島、そして種子島などの生息域の北限とされている海域での人気が高くなってきています。
釣り人の間では生息域の北限と南限に大型のGTが潜んでいるというウワサがあり、日本でのGTフィッシング北限となるこの種子島では3月~11月の期間、その超大型を狙う釣り人が多く訪れています。
大型の個体は生息する地域によってシガテラ毒という餌由来の毒をもつ可能性があるため釣りあげてもほとんどがリリースされます。そのため釣り船の上ではファイト中からデッキに水をかけ冷やし、魚体に少しでもダメージを与えないように配慮しています。
時代の進歩とともにGT用タックルも進化を続けており、ラインの主体はPEへと移り変わってきています。道糸PE6号以上、リーダーはナイロンの130ポンドから170ポンドというのが定番で、岩礁地域などの根ズレが多い場所ではそれ以上の太さのラインを使う場合があります。ロッドは8フィート前後のGTキャスティング用、リールはシマノでは8000番以上、ダイワでは5500以上の番手となります。
そのほか、すべてにおいて妥協のできないこの釣りでは、船のデッキ上で滑らない靴や、炎天下の下体力の消耗を抑えるためのラッシュガードや帽子、日焼け止め、ジギング用グローブ等が必要です。
「釣りは、まず船頭の癖を知り船頭を釣れ」。昔からよく聞く格言です。
GTフィッシングにおいてもまさにその通りで、ボートフィッシングがメインとなるこの釣りでは巨大なGTをヒットさせてキャッチまでもっていくために船長はじめ同乗者すべてがひとつにならなければキャッチの可能性は低くなります。その海域に精通した船長といかにコミュニケーションをとり実績に結び付けるか・・・・ 予約のメール、一本の電話からGTフィッシングは始まっているのです。
筋トレ、ラインの結束練習、動画でのイメージトレーニング、タックルや船代など決して安くはないこの釣りですが、それゆえ一匹を追求する情熱が生まれ、人生を懸けることができる釣りなのではないかと思います。夢の続きは種子島で。